15人が本棚に入れています
本棚に追加
(この芝の上で、名探偵シャーリーと怪盗貴族の出逢いを読んだら……最高に違いないわ)
彼女の心を読んだのだろうか、母に𠮟られてしまう。
「全くこの子は! 淑女らしくなさいとあれほど!」
「ごめんなさい、お母様」
「……はぁ」
夫人は大きなため息を吐き、隣で見ていた夫に視線を送る。
父であるポーター侯爵は娘を見る。
「アイリーン。お顔を一目見るだけでもしてきなさい」
父、最大の譲歩である。夫人は隣で「それだけ!?」と言わんばかりだが。
しかし父の内心は別のところにある。
娘は嫁に行くのはまだ早い。
王宮のパーティーですらそう思う父は、娘が可愛くて仕方がないのだ。
「はい! 早速行ってまいります!」
途端にやる気を見せたアイリーン。
自由時間確保のために彼女は、本日最も大きな人だかりの方へと足を進めた。
(早く済ませてしまいたい)
人だかりに突入したアイリーンの心境はその一言に尽きる。だがそれも、王太子殿下のご尊顔を見るまでの事だった。
「!」
令嬢方の隙間から垣間見たエドガー様の姿に、数十秒彼女の呼吸は止まっていた。
「はっ!」
最初のコメントを投稿しよう!