ファイル12 孤児と盗まれたパンー前編ー

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 飲食店が立ち並ぶエリアに入った二人は、前方の店先に人だかりが出来ていることに気付いた。 「ん? 何かしら?」 「どうやらパン屋の前で揉めているようですね」 「行ってみましょう!」 「気を付けてくださいね」  アイリーンは心配そうなマギーを連れて、人だかりをかき分ける。  一番先頭まで来た二人が見たのは、パン屋の前に小汚い格好の子供達と、パン屋の女店主らしい人が対峙しているところだった。  女店主が子供達に怒鳴っているようだ。彼女の手には、丸めた新聞紙がある。  十歳に満たないであろう少年と、五歳ぐらいの女の子。少年は女の子を後ろに庇う形で、パン屋の女店主に立ち向かっていた。 「アンタたち! いい加減にしなよ! まだ認めないのかい!?」 「違うよ! 僕たち盗んでないんだ!」 「正直に言うなら許してやるって言ってんだよ! なんでまだ嘘を吐くんだい!?」 「だから、違うって言ってんだろ! このおばさん!!」 「おばっ! 誰がおばさんだ!」  熱くなった店主が新聞紙を振り上げ、子供たちが叩かれると思い咄嗟(とっさ)に目をつぶった時だった。 「あの~、少しよろしいかしら?」 「ちょ!」  マギーの制止も聞かず、アイリーンが店主に声を掛けた。
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