ファイル1 恋心窃盗事件―怪盗プリンス爆誕―

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 アイリーンは両親の表情など見えていなかった。  ただただ、胸の高鳴りをやり過ごすことで精一杯。 (本当に、なんてことなの……)  まるで愛読書(あいどくしょ)に出る怪盗の仕業(しわざ)のようにあっさりと。  彼女にとって初めてであったソレは、驚くほどあっけなく(うば)われてしまったのだ。  (わず)かな時間、視線が(から)み、笑みを見た。たった、それだけで——  アイリーンの心は、あっという間に美しい夜空の瞳の(とりこ)となった。 (エドガー殿下、なんて素敵なの。まるで、怪盗貴族のようにするりと私の心を奪ってしまわれた。きっと殿下は——怪盗なのだわ!)  そしてここに、恋心(こいごころ)窃盗犯(せっとうはん)、怪盗プリンスが爆誕(ばくたん)した。
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