ファイル12 孤児と盗まれたパンー前編ー

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「ふふふ。遂に私の【とっておき】が活躍する時が来たわね。この日のために準備した【探偵七つ道具】よ!」  じゃじゃーん、と音が付きそうな自信たっぷりな様子で、包みを二巻きだけ解くと中から現れたのは、可愛いらしい細工の施された虫眼鏡。  アイリーンは虫眼鏡を構えて、店の柱や周辺を捜索し始める。  しばらくして足元を見たアイリーンは、姿勢を低くして地面を調べ始めた。 (地面にはいろんな足跡があるわね。子供達の足跡は……あった。店に近寄った形跡はなさそうね。ん? これは……肉球の後?)  彼女の虫眼鏡が捉えたのは、パン屋へ続く肉球の足跡だった。 (屋外で、往来の真ん中に……怪しいわね)  彼女は虫眼鏡の持ち手でざっと肉球の大きさをはかる。かなり大きな肉球は、割と大型のようだと推測した。 (こんな大きな肉球の猫はいないし、犬ね。でも、大きな野良犬が昼間から往来の真ん中にいれば、店主もすぐに気付づくし、絶対追い払うわよね。となると――)  アイリーンは彼女の仮説を裏付けるため、証拠となる足跡を入念に探す。 (あった。犬と同じような間隔をあけて、真横を歩いている。つまり――)
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