ファイル12 孤児と盗まれたパンー前編ー

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 アイリーンが店頭に並んでいるパンを見れば、焼きたての札がかかっている。  店主によると三十分ほど前に札を掛けて、パンを並べたらしい。 (犯行時間はパンが置かれた後、子供達が勘違いされるまでの約ニ十分の間に起こったのね) 「ねぇ、ニック。貴方達がここを通った時には、パンは全部あったの?」 「うーん。わかんない」 「……なかった。そこだけパンがなくて、おかおみたいでおもしろかったの」 「そうなのね。ありがとう、リサ」  アイリーンは兄に隠れながら話したリサに微笑むと、周囲の野次馬を見始める。  そして、野次馬を見張ってくれていたマギーの元へ行き、とある指示を出す。 (さて、後は推理を披露しながら、犯人がかかるのを待つだけね)  内心ほくそ笑んだアイリーンは、パン屋の前に戻ると、大きな声で注目を集めた。 「皆さん! 今から私がこの事件の真相をお話しますわ!」
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