15人が本棚に入れています
本棚に追加
パン屋から離れた一行は、噴水のある広場へとやってきた。
噴水の縁に座ったアイリーンは、ニックとリサにパンを渡す。
「はい。全部貴方達にあげるから、お食べなさい」
「いいの?」
「ええ。構わないわよね、マギー」
「はい」
アイリーンとマギーが優しく笑うと、二人は安心したように満面の笑みを浮かべてパンを食べ始める。
「お水もありますよ」
二人はよほどお腹がすいていたのだろう、水とパンを夢中で頬張っている。
「ふはー!」
満足して落ち着いたニックが、ため息とも歓声ともつかない声を上げる。
そして、今も嬉しそうにパンを食べている妹を見て微笑むと、アイリーンを見て礼を言う。
「ありがとな、助けてくれて。俺だけじゃダメだった」
小さな頭が下げられるのを見たアイリーンは、目を丸くしてから、何でもない様に言った。
「だって私は事実を伝えただけだわ。偉いのは貴方達よ。罪を犯さなかったこともそうだけれど、疑われても真実を訴え続けた。パンだけ欲しければ罪を被ることも考えられるわ。貴方達はそれをしなかった。立派に妹を守っていて素晴らしいと思うわ」
最初のコメントを投稿しよう!