ファイル13 孤児と盗まれたパン―後編―

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 屈託(くったく)なく笑う彼女に、今まで張り詰めていた緊張がほぐれたのか、ニックは毒気を抜かれた様に脱力する。 「そっか。はは」 「マギー、私、何かおかしなことを言ったかしら?」 「いえ、通常運転です」 「ははは。こんな変なお嬢様がいるんだ……なぁアンタ、結構上のお貴族様だろ?」  ニックはニヤリと笑ってアイリーンに挑戦的な目を向ける。 「え、何故!?」 「見りゃ分るよ。言葉遣いとかもきれいだし。姿勢とか雰囲気とか、隠しても分かるって」 「そ、そうかもしれないわね」 「お礼に手伝うぜ! アンタの探偵業!」  にんまりと笑顔を見せるニックに、アイリーンとマギーは驚く。 「ええ!? 確かに情報は欲しいけど……」  言いよどむアイリーンに、「ちっちっちっ、舐めてもらっちゃ困るぜ」とニックは人差し指を振って、自信ありげに笑った。 「俺達だって、この平民街で何も考えてないわけじゃないんだ。ちゃんと情報網ってやつがあるんだよ。スラムに住む俺達特有の情報網がね」 「そ、そうなのね」 「それともスラムの人間を近くに置くのは、お貴族様は嫌かい? それなら、やめておくよ」
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