コロナ渦中の闘病日記 -28,最後の試験-

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コロナ渦中の闘病日記 -28,最後の試験-

開胸手術後7日目にあたる4月15日に「退院前の最後の試験」をする旨をK外科医から告げられた。術後5日目のことである。 採血、採尿、心エコー、レントゲン、心電図。1日かけて検査のオンパレード。この検査結果次第で退院できるかどうか決まる。術後の経過は良好で問題はなさそうだが数値を見て最終判断を下すとのこと。漸く外に出られる…かもしれない。 不安半分、嬉しさ半分で検査当日を迎えるはずだったが。術後6日目の朝、つまり検査の前日に朝から吐いてしまった。 何としても退院したい!それには栄養をつけなくては! 1日、2日で栄養ががっつりつくわけでもないのに、無理をして出される病院食を完食していたら胃に負荷がかかったらしい。個室の洗面台でゲーゲー吐いているところをよりによって朝の回診で訪れたK外科医、D外科医、M外科医にばっちり見られた。 「吐いたの?ちょっと看護師!」 M外科医が慌てて看護師を呼んだ。 あれ、あなた担当医の1人では…? ツッコミを入れる余裕もなく、胃を抑えてしずしずとベッドに腰かけた。ちらりとK外科医をみると、冷めた目で私を見た。うっ、明日は最後になるであろう検査日のはずなのに、何てことだ。   幸い吐き気は午前中には治まった。 午後、理学療法士のI氏が顔色を変えて個室に訪れた。 「吐いたんだって!?大丈夫!?」 どうやら電子カルテを見てリハビリで無理をしたのでは?と心配してくれたらしい。吐き気はとうに治まっていたので、ご飯を食べすぎまして…と事情を説明し、いつもの歩行訓練を行った。 運命の術後7日目の検査は全てクリアした。 やった!退院できる! やったー!!!長かった!!!やったー!!! 検査結果を聞いてあからさまに喜ぶ私をK外科医は相変わらず覚めた目で見ていた。本当は熱心で優しい外科医なのだが、職業柄患者の前では冷静を保っているつもりなのだろう。K外科医よ、看護師の間で外科医の中で一番熱い先生だと聞いてますよー。ふふふ。 退院日は4月21日に決まった。 しかし、実はこの時点で点滴がまだ外れていなかった。感染性心内膜炎は最低でも4週間の点滴投与がされる。+2週間、つまり最大6週間の点滴投与をされるケースがあるのだが、K外科医は念のため6週間と数日点滴投与をすると告げた。   良い、良い。 点滴棒と管は邪魔だけど、退院日が決まったし、徹底的に健康な身体になって外に出たいから点滴は我慢しますよ。 病は気から。本当にその通りだ。退院が決まってから気持ちが大変軽い。 早速荷物を整理していると、夕食を運んできた看護師に苦笑いされた。 「もう退院の準備?」 「はい!緊急入院だったので不要なものも色々持ってきてまして…。いらないものはこの際なので捨ててしまおうかと」 ちょっと寂しそうに看護師は笑った。 「そっか。無理しないで整理してね」 退院が決まってからAmazonで頼んでおいて大正解だったものがある。 それはユニクロでいうブラトップ、カップつきのインナーである。 開胸手術後は胸の傷が痛くてとてもではないがブラはつけられない。ノンワイヤーかカップつきのインナーを看護師に勧められ急遽購入したのだ。 退院後の衣について色々アドバイスをくれた看護師は、以前の職場で乳がんの患者を担当していたことがある。 ワイヤー入りだと傷にあたって痛いので当分はつけるのを控えた方がいいこと、Tシャツなどゆったりとした服やパジャマ、ワンピースを着ると楽だということ、数か月で痛みがひくからそれまでちょっと辛抱すれば大丈夫ということ。 乳ガン。ひぇぇ。 早期発見すれば命に関わりは低いとは言われるガンではあるが、年齢が若ければ若いほど進行は早い。以前担当した20代で乳ガンになった患者は切除に非常に抵抗を示したという。 切らなければ転移してしまう、でも形は残したい。葛藤に葛藤を重ね、親やパートナーに説得されて切除する患者を何人も見てきたそうだ。 他人事には思えない。 ガンに限らず定期検査はとても重要だ。 衣の相談ついでにワーファリンの服用について気になることがあり聞いた。 ワーファリンとは抗凝固剤で体内で血小板をつくる作用を抑える薬だ。心臓血管手術を受けた患者の大半は術後飲むであろう昔からある抗凝固剤。心配なのは月の物(生理)だった。  ワーファリンの服用を始めたのが術後からで、ワーファリンを服用してからまだ月の物はきていない。出血の量が多くなりそうで不安だったのだ。 「うーん。子宮の血の壁が剥がれるのだから特に問題はないと思いますが」 そっか、問題ないか。 そのときは安心したが、翌月の月の物は…。 この件についてはまた後日。   ともあれ女性同士でないと分からないことが沢山あるので、女性の看護師が担当にあたってくれて非常に助かった。 退院してもすぐに日常生活に戻れるわけではないし、女性ならではの悩みも多々あるので遠慮なく聞いて正解だった。
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