コロナ渦中の闘病日記 -29,退院前日-

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コロナ渦中の闘病日記 -29,退院前日-

4月20日。 あっという間に退院前日を迎えた。 荷物は小さいスーツケース、貴重品をいれたバック、トートバック、リュックサック(2泊3日用)にまとめて個室に併設しているソファーの上にまとめた。いよいよ明日っ、退院! 2日前には点滴が完全に外れ右腕も左腕も身軽だな。あー幸せ。やっと外に出られる。    前日の午前中に突然入院してからずっとお世話になってきた薬剤師のOさんが来た。 「あ、明日退院だよね。えっとね、ちょっと話があるんだけど、何だっけ?」 え? 「あ、ちょっと待って。退院にあたっての退院処方は午後に持ってくるから」 は? 「ごめんね、ちょっと忙しくて。顔出してみただけなんだ」 Oさん、お疲れ気味なのか「また来るね~」と個室を出て行ってしまった。  退院前日は薬剤師から退院処方、管理栄養士から食事指導がある。先走ってOさんは来てくれたようだ。  午後一で管理栄養士が来たので退院後の食生活について説明があった。  特に厳しい制限はないが、服用するワーファリンと相性が悪い食品があるので気を付けるように言われた。納豆、青汁、緑野菜(ピーマン、ブロッコリー、ほうれん草)はワーファリンの服用中は少しなら食べてもOK。  ビタミンKがワーファリンの効果を下げてしまうので沢山食べるのはNG。納豆は論外。絶対に食べては駄目。  意外だったのが私は細身の体質のため1日の摂取は1600キロカロリーが目安。カウンセリングをしたところ普段は1500キロカロリーしか摂取していないようだ。ご飯の量を増やして主食、主菜、副菜、をバランスよく食べること。栄養補助食品(カロリーメイトなど)も食べてOK。電卓をカタカタ叩きながらカロリーを計算してもらった。  心臓の手術をしたばかりかので塩分取りすぎると心不全になるので、薄味で調味料なども気をつけなくてはならない。  …あれ、意外とうるさいな。細かいな。 「ラーメン食べちゃダメよ。あ、食べてもい いけど汁は飲まないでね。塩分高いから」  あら、ダメなのか。 「生物もしばらく控えてね。身体が病院食に 慣れてるから。消化不良起こすから、食べ るなら白身魚を焼いたやつとか」 はっ、はい。 ガサガサ鞄から資料を取り出すと管理栄養資料を幾つかくれた。 次の予約があるらしく、慌ただしく20分くらいで管理栄養士の方は個室を後にした。 それからⅠ時間後、「ごめんねー」 ひょっこり薬剤師のOさんが顔を出し、 「退院当日に薬はまとめて渡すから、それま でに用意しておくね。それと」 すっ…。何かを取り出した。 あ、お薬手帳とワーファリン手帳だ。 「入院したときに預かっていたのよ」 「すっかり忘れていました。なくしたかとば かり」 「処方薬のシールは退院時に貰えるから必ず 張ってね。今飲んでいるくすりで副作用と かない?」 こちらも忙しいのか早口で質問をしてきた。 「いぇ、大丈夫ですが」 「そっか、何か伝え忘れたらまた立ち寄りま すね。退院してから異変あったらK外科医 に離してね。薬調整するから」 いつもならソファーに座って雑談もするのに、忙しいらしく立ったまま矢継ぎ早に説明をすると、次の患者のところに行ってしまった。 台風が過ぎ去ったような? 静けさを取り戻した室内で恐る恐るワーファリン手帳を開いた。 見なきゃ良かった…。 納豆、緑野菜、青汁の摂取不可どころではない。思ったより事細かに何か書いている! 見なかったことにしよう。 要は食べすぎなきゃいいんだ。 ふぅ。ため息をついて貰った資料をトートバッグに詰めた。これで終わり。この個室とも明日でさようならだ。 夕方になると日勤を終えた内科の看護師が様子を見に来てくれた。外科に移ってからもちょこちょこ顔を出しにきてくれる。 「退院おめでとうございます。本当に気をつ けて生活してくださいね」 仕事が終ってお疲れのところ申し訳ない。 ソーシャルディスタンスを保ちつつ、少し雑談をした。内科には入院当初から本当にお世話になった。あれだけ嫌がった人生初の入院を支えてくれた看護師が沢山いる。辛かった思い出も楽しかった思い出も頭の中をくるくる駆け巡った。名残惜しかったが、退院までやっとたどり着いたのは医療従事者の皆さんのお陰である。 「退院したからって、無理は禁物ですよ。旅 行だ!外食だ!って動き回って数ヶ月後に 戻る患者さんもいましたから」 やだ、何それ。 「免疫も落ちてますからコロナには本当に気 をつけて下さいね!うがい、手洗い、シャ ワーを浴びてウイルスを体内に入れないよ うにしてくださいね」 そうだった。退院して間もなく緊急事態宣言が出されるんだった。 この頃は大阪で1日の新規感染者が1000人を越える日もあり、外科でも連日コロナの話題が出ていた。 医療従事者の皆さんには頭が上がらない。 このご時世にみえない敵と闘いながら患者の命を守っているのだから。 「仕事ですから」 そう笑う看護師もいたが、内心は不安だと思う。間者の前では気丈に振る舞う看護師達に心のそこから感謝した。 退院したら終わり、ではない。 退院してからが、新しい一歩なのだ。 油断しないで健康管理は気を付けよう。
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