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――そして迎えた、エルセルム公認のロスト・キングダム探索決行当日。
リヴィングストーンたち最初の探索隊は、ロスト・キングダムとの境界ギリギリに設置されたキャンプに集まっていた。
探索隊は昨日からここに泊り込み、早朝に出発することになっている。
最初の探索隊は20名。エルセルムから許された定員の上限だ。
危険を厭わない勇気ある者というより、命知らずの集まり。
リヴィングストーンの支持者たちは早朝に彼らの旅立ちを見送るため、数百名も集まった。そして各社メディアも詰め掛け、出発前にインタビューを受けた。
そして時間が来ると、リヴィングストーンはアンナと並び、先頭に立つ。
「緊張してきたな」
「緊張してる人はそんな風に笑わないわよ」
大きな荷物を背負い、彼らはロスト・キングダムの闇のベールへと踏み入れた。
そして、一変する辺りの空気。闇のベールの向こうは、まるで別世界。
生きた人間が足を踏み入れることを拒む、鬱蒼とした森。まるでこの世界に拒絶されたかのような悪寒が走る。
「ここが……禁域、ロスト・キングダム……!」
ここに初めて入った彼らは、自分たちが歴史に残る大きな一歩を歩み出したと自覚した。
「みんな、行こう。まずは沼地を目指すんだ」
リヴィングストーンを先頭に進む隊員たち。歩きながらも周囲を観察する。
ここで一人の隊員が植物を採取した。
「……特に変わったことはない。外の世界にも普通に咲く花だ。一応サンプルとして回収しておくか」
エルセルムの指示通り、きちんと地図に示されたルートを進む。そんな中、リヴィングストーンは草木に覆い隠された岩を見て立ち止まる。
「これは……なんだろう。遺跡か何かか?」
人工的に切り出された岩。見ると、森の奥の方にも似たようなものが確認できる。
草木をかき分けて進もうとしたリヴィングストーンのリュックを、アンナが引っ張る。
「そっちはダメ。ルートから外れてるよ」
「ちょっとぐらいいいじゃないか。政府の人間だって別に監視をつけてるわけじゃあない。こうでもしなきゃ、何も発見なんてできやしないだろ」
「今のあなたの目的は、世紀の大発見をすることじゃあないはずよ。
無事にこの探索をやり切って、信頼を勝ち取ることでしょ?
それに……」
と、ここでアンナは声を潜める。
「私たちの中に政府のスパイが混じってるかもしれない。
早速マーシャルさんや王様を裏切ったなんて知れたら、もう二度と支持してくれないわ」
「……はぁ。わかったよ」
と、リヴィングストーンは名残惜しそうに遠くを見た。
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