ホテル・カリフォルニア

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燈良はその言葉にそそのかされた。 戦わずにレベルを上げることができ、しかもレア武器までも手に入る。自分には上位ランカーの北条がついており、極めつけにこのイベントは下位ランカー向けなので他にプレミアスキルを持っている者はいないだろう。 北条が「ま、冗談だ」と言った言葉はもはや燈良には届いておらず、翌日の集合時間を早めた。 北条は自分が言い出してしまった手前、断るのも悪いと思ったのか、文句を言いながらも付き合ってくれている。 どのみち、二人の進行方向的にもアスカトリは通過することになる。 二人は大会のエントリーを済ませると、スタートまでしばらく大通りの片隅で話す。 「こんなこと今更言うことでもないけど、レベルと身体能力はかなり密接な関係がある。 レベルが上がれば、体力は自動的に増える。 例え俺の三倍ぐらいでっかいデブでも、レベルさえ上がれば、このマラソン大会をぶっちぎりでゴールできる可能性はある」 「下位ランカー向けのイベントだろ?そんなにやばいやつがいるのか?」 「俺らと同じ考えの奴はいてもおかしくはない。 でも中級者ぐらいなら、こんなことをするぐらいならその辺でモンスターを狩ってた方が効率がいいって考えるはずだ。ただ……」 北条は周囲の参加者を眺めた。 「お前と比べたら誰だってお前より上位ランカーだ。単純な体力勝負じゃあ分が悪い」 「でも、そのために北条も参加してくれたんだろ?」 「せっかく来たからには優勝を目指さなきゃ、コスパが悪い。 まぁ、とりあえず先頭に食らいついていければ、後は俺が一網打尽にしてやるよ」 「何する気だよ……」 「それは楽しみにとっておけ。 万が一お前がダメでも、俺がサクッと優勝してレア武器だけ持ってきてやるよ」 北条にとっても、燈良が強力な武器を手に入れて強くなることは助かるはずだ。いつまでも弱いままでは自分の足を引っ張り続けることになるからだ。 マラソン大会開始直前、燈良と北条はなるべく先頭の方へ進んだ。 「本当にそんな格好で出るのか?」 北条はいつもの革ジャンを着た、動きにくそうな格好だ。靴だってブーツのまま。 「あぁ。この格好は俺の生き方だからな。マラソンごときが俺の邪魔はできねぇ」 「いや……浮いてるって……」 燈良はそう小声でつぶやいた。
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