ホテル・カリフォルニア

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スタートの合図が鳴ると、二人は先頭集団に混じった。 コースはアスカトリの大通りを使っているため、追い越しは比較的容易だが、彼らはまず先頭のペースに合わせることにした。 走り出して僅か1分というところで、二人は口には出さなかったが、ある現象に気が付いていた。 砂の混じった風が吹いている。この地域はあまり砂が舞うことはないはずなのだが、それが次第に強くなってきているのだ。 燈良や北条だけではなく、周囲の者たちは皆、この砂の中を鬱陶しそうに走る。 「オカシイ……」 しばらくして北条が走るのを止めると、それに合わせて燈良や周囲の者たちも走るのを止めた。 気が付けば砂嵐は前方数メートルも見えないほどのものとなっていた。 こんな悪天候ではとてもじゃあないがマラソンどころではない。 「どうすれば良いんだよ、これ……」 燈良は早くもこのレースを諦めかけていた。先頭集団はいつの間にか見失っている。近くに4名ほどの参加者がいるようだが、後方の集団も同じ状況なのか、追いついてくる気配はない。 「まさかとは思うが……」 北条は顎に手を当てる。 「これ、攻撃されてるんじゃあねぇだろうな……」 「えっ、もう?」 北条の言葉に最初に反応したのは燈良ではなく、周囲にいた者たちだった。 「あ、あの、攻撃ってどういうことですか?」 近くにいた若い男が言う。 マラソン用の走りやすい格好をした男。高身長かつ、鍛えられた体。左腕にはナビが見える。 「お前、プレイヤーか」
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