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風によって煙が晴れていくと、残った男の前には革ジャンの男が立っていた。
「残るはお前だけだぜ」
見た目は男よりも明らかに年下の若者。年齢は20代前半といったところか。
その茶色に染まった髪は風で乱れているが、前髪の一番長い部分は鼻のあたりまではある。耳は髪で見えず、頬を覆い隠すほど長い。襟足に至っては確実に襟より下まで伸びている。
耳には銀色のピアスがいくつかと、首元にはネックレスのチェーンが見える。鉄の棒を持つその右手の指には銀色の指輪があった。
この男が一番嫌いなタイプの、ロン毛のチャラ男。
元々革ジャンの男に絡んだのはこの男の方からだった。理由は単純で、このような見た目の男が気にくわない。それが一番の理由だった。
「お前……一体何者なんだ……」
男は一歩も動けなかった。まさに蛇に睨まれた蛙といったところか。男は既に敗北を認めていた。
革ジャンの男はタバコを咥え、火をつける。
「お前、プレイヤーキラーだろ」
「…………」
「まっ、別にお前らがどんな活動をしようと勝手だ。邪道ではあるが、一応ルール上は問題ねぇし。
ところでお前、プレイヤーキラーやってんなら出来てんだろうな? 自分がやり返されるかもっていう覚悟が」
一度、鈍い音が響くと、男は口から血を吹き出して倒れた。
男の歯は折れ、白目を剥いて気を失っている。
革ジャンの男の仲間である女は思わず目を逸らした。
革ジャンの男は血のついた鉄の棒を地面に投げ捨て、地平線の先を見る。
「いよいよだな……」
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