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有問題
よしっ!
キレイに拭けた。
これなら明日家具を入れても無問題。
本格的な引っ越しの前日。
スカートじゃなくてデニムのパンツで来たのは、正解!
床を拭いて、カーテンを付けて、ヨシヨシ!
水道と電気は来ているから、明日は、荷物を入れて、それとガス屋さんにも来てもらう。新しい職場は明後日からでちょっと忙しいけど、順調、順調。
雑巾も洗った。でも、すっかり遅い時間になってしまった。
さあ、明日の引っ越しのために帰るか!
パチッと部屋の電気を消して、サンダルを履きドアを開けた。
ガンッ! ドサッ!
「えっ? うそっ!」
そんなに勢いよく開けていないはず……。
なのに、なのに、人を殺めてしまったようだ。(殺してはいない)
「すいません、大丈夫ですか?」
ドアの影からそろ~っと覗き見ると、ドアに押された勢いで壁に寄りかかってしまっているスーツ姿の男の人がいた。
えっ? そんなに衝撃あった⁉
ヤバい、私、なんて事してしまったんだろう。
「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
「ん?」
と、スーツの男性は壁の方を向いた体をこちらに向き変えた。
うわっ、綺麗な人、男の人だけど美丈夫様だ。
寄りかかった壁からズルッと、ズリ下がり、美丈夫様からプーンとお酒の匂いがした。
「えっ? うわっ、酔ってんの? もしもーし、お名前言えますか?」
いくら酔っぱらいとはいえ、自分が殺めてしまった事には変わりない。
(殺してはいない)
こちらをチラリと見た瞳の周りが酔いでほんのり朱に染まり色っぽい。
「もしもし、大丈夫ですか? お名前言えますか」
「みさき……ゆうせー」
と言ってヘラリと笑った顔が、実家にいるポメラニアンみたいに愛くるしい。一見クールに見える顔から、その人懐こい笑顔は、反則技を不意に喰らったような衝撃!
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