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「うわーっ!美味しそうですね」
カツオの表面を高温でパリッと焼き上げ綺麗にカットされ、たっぷりの野菜と一緒に盛り付けされている。特製のタレにつけるとニンニクやショウガ、青じその薬味が香り口の中でとろけるよう。
「佐藤さんに喜んでもらえて良かった」
また、そんな事を言って優しい顔を見せて、人の事をドキドキさせて、無自覚な人たらしは罪深いなぁ。と思った。
だいぶ食べすすめたところで、カラカラカラと引き戸が開き、作業員風のオジサンが入ってきた。「おかえりなさい」とおかみさんの声が響く。
「よう、先生、今日は彼女も一緒かい? 乾杯しよう! 生3つな」
「ハイハイ、繫さん。わかりましたよ」
いきなり、オーダーが通ってしまい。目の前にジョッキが置かれた。
三崎先生は、笑いながら繁さんと呼ばれてたオジサンに「ごちそうさま」と言って、ジョッキを上げた。それに習って、私も「ごちそうさま」とビールをいただいた。
くぅー。労働の後の一杯は沁みるぅ。
「お、美人の彼女さん、飲みっぷりがいいね!」
オジサンの声が掛かり、いつの間にかこのお店で私は、三崎先生の彼女に認定されていて、こそばゆい。
顔が熱い気がするのは、ビールのせいだけではないだろう。
「三崎先生、気取っていなくて、感じの良いお店ですね」
「あのマンションで暮らすのに、このお店を知らないのは損だよね」
「ですね。私、また来てもいいですか?」
「もちろん」
気取って居なくて、アットホームな雰囲気でホッとさせてくれる空間。三崎先生のプライベートの中に入れてもらったようで、嬉しい。
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