158人が本棚に入れています
本棚に追加
「リョク兄って緑が好きなんだ」
知らなかったなあ。でも、思い返せば、靴とかネクタイとか時計のベルトとか、緑の物ばかりだったかも。
スカートをつまんで、びよんと釣り上げてみる。似合わないけどぴったりだって、リョク兄の好きな色が。
少し歩いてブライズルームの扉をノックすると、笑顔のリョク兄がわたしを迎えてくれた。
テールグリーンのネクタイと、白いブートニア。本当にかっこよくホワイトタキシードを着ていて、幸せそうに笑っていて。だからわたしも、素直に笑えた。
だって、同じ笑顔なんでしょう。そのほうがずっといいじゃない。
「美鶴」
リョク兄。
優しくて、何かを伝えたい時は必ず、手をぎゅっと強く繋いで。その手はいつでもあたたかくて、やさしいかたちの爪をしている。
わたしが、世界で一番愛している人。
わたしを、世界で一番愛してくれる人。
わたしのたったひとりの、家族。
わたし、今日は死んでも泣かないわ。リョク兄の好きな色のカクテルドレスを着てせっかく綺麗なんだから、涙なんて、似合わないもん。
ねえリョク兄。まだ言ってなかったよね。
「結婚おめでとう、リョク兄」
いつまでも幸せに。
だけどたまには、兄妹サービスをしにきてね。
【カクテルドレスのヨロイ 〜一件落着〜】
最初のコメントを投稿しよう!