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「杏子さん、今日ひじき煮たけど、少し食べる?」
母屋に住むお義母さんが、勝手口から声をかけてきた。
「わ、助かります。おかず増えた!」
「何作ってんの? ……ふろふき大根! いいな、おいしそう」
「あ、もう少しで出来上がるんで、持っていきますよー」
「少しでいいよ。お父さん、急に飲みに出かけちゃって、私ひとりだから」
「だったら、今日こっちで一緒に食べましょうよ。もうすぐ浩哉さんも帰ってくるし」
「じゃあ、今お鍋持ってくる」
いそいそと母屋に戻るお義母さんを見送り、味噌だれを作り始める杏子さん。
さっぱりした気性のお義母さんとは、今のところ上手くやってる。
一応、別々に居を構えたとはいえ、同じ敷地内に暮らしているから、ちょっと不安もあったけど、仕事を持っている杏子さんのために、いろいろ気を遣ってくれているのが分かる。
今みたいに、おかずを余分に作っておすそ分けしてくれたり、雨が降りそうだと洗濯物を取り込んでおいてくれたり……でも、それが押しつけがましくない。
杏子さんのことを、実の娘のようにかわいがってくれている。
なもんで、杏子さんも、一緒にご飯を食べたり、お出かけに誘ったりして、なるべく接点を持ちたいと思っている。
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