わがままな君には白いベールがよく似合う

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 ーー麻里奈、と思う。  私にとって、彼女を思い出すときには決まって、痛みに近い嫉妬のような感情が湧き上がる。比べることはない、麻里奈と私は違う人間なのだから。そう自分に言い聞かせても、私は自分を宥めることができない。 「麻里奈の結婚相手ってどんな人なのかな?」  七恵が華奢なデザインの腕時計をチラリと見る。 「私もそこまでは聞いてないんだよね」 「そっか。連絡取ってなかったもんね」 「え?」  七恵の声が小さく跳ね返ってくる。 「私、結構連絡は来てた。会ったのは高校卒業してから二、三回くらいだけど」 「そうなの?」  ただでさえ、麻里奈の結婚という事実に動揺しているというのに、驚きの事実を告げられ、私の声は少し震えた。 「私、そろそろ行かなきゃ」  そのことを知ってか知らずか、七恵はそう言って、申し訳なさそうに私の顔を見る。この後に、婚約者の男性と会う約束があるらしい。 「ごめんね、時間取らせて。彼、待ってるでしょう」    店を出ると、雨がパラパラと降っていて、私達の肌を濡らした。 「あのね」  私ではなくまっすぐを見据えながら、七恵が言った。行き交う人々の流れが目まぐるしく、私は軽く目眩を覚えた。 「実は麻里奈、華子のこと少し怖いって言ってて」 「なんで?」 「どうしてかはわからない。でも、たまに自分が咎められてる気持ちになるって。ごめんね、隠れて会うようなことして」  七恵はそう言って私の顔を見た。綺麗でまっすぐな目だった。  私は、ああ、こういうところか、とどこか合点がいった気がした。  それから、七恵は私と別れると雨の中をパタパタと小走りに去っていった。
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