わがままな君には白いベールがよく似合う

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「麻里奈が結婚するらしいよ」  私は気持ちを落ち着けながら、智也にごく自然にそう話しかけた。 「麻里奈って、高校時代の話に出てくる、性格ブスな女?」  私は智也の安直な返しに思わず笑ってしまう。今日も彼は家に来ていた。 「そうそう」  でも、と思う。あの日、七恵と別れた後に傘も買わず、濡れながら家路に着いた。  私は麻里奈を思った。 ーー麻里奈。麻里奈。 「別れよっか」  私は気がついたらそう口走っていた。智也は意表を突かれた表情で私を見つめる。 「私、好きな人ができたの。智也よりずっと前からほんとは好きな人がいたの」 「なんだよ、それ」  そう言って智也は家を出て行った。元々怒ると、家を出て行く人なのだ。しかし、今回に限っては智也がもう帰ってくるかどうかの確証はなかった。私はそれでもよいと思っていた。  結局はこの前の結婚の話を持ち出したのも、麻里奈に対抗してのことだった。  プロポーズを急かしたのも全て麻里奈のことがあったから。わたしは智也以外の人を愛さなくてもいいように彼と結婚をしようとしていた。
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