第一章 通信指令

3/11
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
 皆川の自席は、受付勤務員の後方にある。勤務員が誤った処理、判断をしていないかをチェックするためである。もちろん、通報電話が集中し、勤務員だけではさばききれない状況に陥った時は、皆川も対応に当たる。その時は、その日の当務責任者である管理職が、通報内容のチェック、後方支援を行うことになっている。  二月は冬でも一番冷え込む時季だ。救急要請の件数も一気に跳ね上がる。現在も市内に配備されている救急隊八隊は全て出動中であった。  室内正面には、畳六畳分くらいの大きさの矢留市全図と、情報収集用の百インチ画面の液晶モニターが張り付けられている。モニターは画面分割され、市内数か所にある監視カメラの映像が確認できる。現在の画面は、どれも暗く、夜のひっそりとした街並みを映し出していた。  これらの画面に向かって、受付指令台が三台設置されている。  出動指令を発した後、指令本部では、現場の消防隊、主に指揮隊だが、無線交信を行い、災害の全貌を把握するとともに、フォローを行う。 具体的には、消防活動に際して注意義務を怠っていないかチェックしたり、応援要請の有無はないかを確認したり、消防隊の活動する必要がなくなるまで、円滑で適正かつ効率的な活動ができるようバックアップするのだ。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!