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部屋へ迎入れ、椅子を勧めないまま、どうして自分に会いに来たのか、何を希望するのかを簡単に訊いた。どうでもいい理由であればそのままお帰り願おうという主旨だ。
金を借りたいということだったので、とりあえず聞くことにした。金額、目的いかんでは応じないでもない。
「座りください」
畑中は部屋の中央にある皮張りのソファに腰をおろしながら、理沙にも座るよう促した。
よろしくお願いします、と理沙は立ったまま頭を下げた。畑中は軽く腰を浮かせ、座りなおす。
今目の前にいる彼女は、立っていた時とは違い、おどおどした視線を泳がせている。粗相をしてしまい、主人に叱られるのではないかと怯えている子犬のようだ。意志が強そうだと思えたのは、緊張のせいで表情が強張っていただけか。
ホワイトのスキニ―ジーンズにダンガリーシャツという質素な服装である。スタイルがいいのはわかるが、金を借りに来たわりにはラフな格好だなと畑中は心の中で苦笑した。
シャツのボタンを三つ外した胸元からは、透き通るような白い肌がのぞいている。浮き出た鎖骨とか細い首。華奢な身体つきには釣り合わない、メロンのような二つの膨らみが胸元には窮屈そうに収められており、シャツのボタンを弾き飛ばさんばかりにその存在を主張している。畑中はしばらく白い谷間を凝視した。
「単刀直入でいきます。経営計画書はお持ちですか。見積書もあればお願いします」お茶を出す気はない。のんびり話し合おうとは思っていない。
「あ、はい」
理沙は、はじかれたように身体を起こすと、傍らに置いていた茶封筒を手に取り、口を広げた。
畑中はゆっくりと鼻で呼吸をし、あらためて相手を見つめる。くっきりと浮き出ている鎖骨から首筋、顎へと視線をずらす。
「これです、お願いします」
目の前に差し出されたのは、A4の紙が二枚。畑中は軽く顎を引いて受け取った。
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