セクサロイドと作られて

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 私の稼働開始から5年が経過している。私はトーコのオフタイム・パートナーであり続けた。有機セクサロイドとの性行為について、是非を論じる者達もいるが、私には関係なかった。ロボットが持ち主に、奉仕しただけのことだ。  私のような「ほとんど人間」であるロボットが人権を有するかどうかについて、私が生産される前から長年にわたって議論が為されてきた。一昨年、ついに結論が出て、憲法および民法、関連する各種施行規則や法令の改正が行われた。いわゆる「人体を有するロボット」は、所定の手順を踏めば、「人間」になることが可能になったのだ。  トーコは、私を人間にする決断をした。彼女はそのために、国産高級車を購入できるほどの出費をすることになった。 「トーコ、無駄な出費です」  私が忠告すると、彼女はロボットには理解不能ないくつものセンテンスを口にした。ただ一点、「人間のパートナーが欲しいから」という理由だけが論理的に正しかった。それでもただでさえ高価なセクサロイドを、さらに出費を重ねてまで人間にする必然性は皆無だった。 「トーコ、提案があります。今後も私をロボットのままにしておいて、夜間の奉仕を命じればいいのです。トーコは私とは別に、人間のパートナーを見つけてください。私とその男性で昼と夜、役割分担をすれば良いではありませんか」 「余計なことを言わないの。私があなたを、人間にするって決めたのだから」  私は結局、持ち主の指示に従った。  人間化の作業は彼女の自宅で行われた。制御系チップの内容を書き換えるだけなので、すぐに終わった。昨夜のことだ。  ドクターは私に、脳が「人間モード」にすっかり置き換わるまでの数時間、目を閉じてベッドに横たわっているように指示を出した。私はしばらく、脳内で制御系のロジックが上書きされたり、行動選択肢や倫理回路のリミッターが外されたりしていく様子をモニターしていた。そのうち脳が疲労したのか、頭がもやもやと重くなり、私は眠りに入った。
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