2.里穂との再会

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 ファーストクラスの乗客の優先搭乗が始まった。里穂とそのパートナーであろう人もその中にいた。まなみはその姿を冷静に見つめていた。  モデル活動をする里帆のことは素晴らしいと思う。ただ、自分の幸せにはそれは当てはまらなず、四季折々の自然を感じながら、汗水垂らして隆史と一緒に農業をすることがとても楽しみだった。  もうその夢からは醒めてしまったことが、改めて悲しく惨めに思えた。  滲んできた涙をぐっとこらえる。もう後ろは振り返らない。ハワイで人生を変えるなにかをつかんでみせる。ぐっと拳を握り直して、意気揚々とファーストクラスにのりこんだ。  シートは1人で座るには十分すぎるくらい広く、フルフラットにでき、毛布もついていて最高だ。ハワイまでの時間を寝て過ごせる、至上の贅沢。  機内食は、機内フルコース。前菜、スープにメインディッシュの肉料理、デザートはフォンダンショコラだ。 メインのフィレ肉のステーキは、地上で食べるのと変わらないくらいの美味しさだった。ミディアムに焼き上げた肉は、焦げ目もほどよくついていて、すっとナイフが入るほど柔らかい。  少し赤みが残った肉の断面は輝いているといっても過言ではなかった。一口食べるとあっという間に溶けてなくなる。  ガーリックのにおいがほんのり鼻を抜けていく。この世にはこんな素晴らしい食べ物があるのだなとまなみは感心した。 食事を終えると、すぐに眠くなった。起きたらもうハワイだろう。
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