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まなみの家はいわゆる日本家屋で、立派な門がまえに、大きな玄関。まなみもお嬢さまだったのかと修二は思った。
「ただいまー!」
まなみはガラッと玄関の引き戸を開けると、元気よく中に向かって声をかけた。
はーい、と中から声がしてまなみによく似た母親がパタパタと出てきた。
「おかえり、心配してたわよ。こんにちは、まなみの母です」
「こちら、北山修二さん」
「はじめまして、北山修二と申します。よろしくお願いします」
こう言う時に修二の愛想は抜群に良い。どうやったら人に好かれるか、すっかり心得ているようだった。
「すてきな人じゃないまなみ。さ、どうぞ。あら? あなた髪の毛切ったの? 短いのも似合うわね」
修二は、母親は大丈夫そうだと安心した。問題は父親だけど……。真摯にいくしかないな、そう気合を入れる。応接間に通され、座布団に座ってしばらく待っていた。
母親がお茶を持ってきて、そのあと父親が部屋へと入ってくる。
「こんにちは、まなみの父で──」
そう言いながら、まなみの父親は修二を見ると、目を丸くして動きが止まった。
「たっ……たかやまさん!?」
修二もびっくりして大きな声を出し、座卓に手をついて前のめりになった。
「北山くん? えっ! なに? どういうこと?」
父親は立ったままでうろたえた。ウロウロしながらやっと座布団に座る。
「お父さん、修二のこと知ってるの?」
「知ってるもなにも、この前まで同じ会社だったからな。部署は違ったけど、よく一緒に会議やら企画やらで仕事してって……ええっ!!」
そこから話は早かった。修二が前に勤めていた会社の常務が、まなみの父親だったのだ。修二の人となりをよく知っていたまなみの父親は、喜んでふたりの結婚を祝福した。
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