10.富山へ凱旋

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前に修二が勤めていた会社は、営業部や店舗は土日もあいている。まなみの父親のように製造部は休みだ。 修二はお世話になった営業部に顔を出すと、しばらく談笑し、高山さんの娘さんと結婚するという話で、多いに盛り上がった。 「よかったね。久しぶりに話ができて」 「退職して以来、初めてきたからな。みんな元気そうで良かったよ」 「不思議なもんだね。最初から修二と結婚するつもりだったみたい」 「運命だな」 修二は助手席でふふんと笑ってみせた。まだ、二日酔いか? それにしても、富山を修二も楽しんでくれているようでよかった。 まなみはロープウェイの事務所に寄った。ロープウェイは冬季休業中だが、社員は観光協会の仕事などをするので、事務所はいつもあいていた。 「えーっ!! 高山くん、仕事辞めるってどういうこと!?」 デスク越しにまなみが話を切り出すと、社長はびっくりしてガタンと立ち上がった。 「突然で申し訳ありません、実は結婚することになりまして……」 「君がいなくなると、さみしいなぁ」 社長はドカンとイスに座り直すと腕を組んだ。惜しんでくれることが、ありがたかった。 「看板娘の退職はこたえるよ」 「看板娘なら、他にもいっぱいいるじゃないですか」 「いや、高山さんはみんなの見本でもあったからね。本当に残念だよ」 ロープウェイは、正社員ではなく契約社員の扱いだったから、一度冬季休業に入る時点で契約は終了になっていた。辞める、辞めないの話でもないのだけれど、次回の契約はしない、という意味で挨拶にきたのだ。 「そういえば……」 社長は、真面目な顔になって切り出した。
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