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さっきまで他人だったふたりが手を繋いで戻ってきたので、元気な女子グループは、えっ?という顔をしていたが、もはやそんなことは気にならなかった。
バスがホテルに着いたのは15時を回っていた。急いでシャワーを浴びてサロンに行かなきゃと気が焦る。
「修二、きょうはありがとう」
「こっちこそ、楽しかった。ね…よかったら連絡先、教えてくれない? またどっか行こうよ。俺、ハワイにはもうしばらくいるから」
「うんわかった。ちょっと待って」
肩から下げた、サコッシュをあけるとあれ? スマホがない……パイナップル園からバスに乗ったときはあったのに……。
「どした?」
「スマホがない」
「えっ? バスに忘れたとか?」
「そうかも……バスに乗ったときはあったから」
「ちょっと待ってて」
修二は慌ててフロントに行くと、ことの成り行きを話してくれた。英語でペラペラと話す姿はとても頼もしい。
「大丈夫、今日中にはホテルに届けてくれるって」
「はぁ……よかった。修二、ほんとにありがとう。なんかお礼しなくちゃね」
「そう?じゃあ今度お願い聞いてもらおうかな」
「うん、いいよ」
「明日の予定は? よければノースショアに行こうよ。今度はレンタカーで」
「ノースショア? 行きたい!」
「じゃあ決まり。明日、10時にロビーでもいい?」
「うん、10時ありがたい。今日パーティーがあるんだけど、何時に終わるかわからなくて」
「パーティー?」
「そうなの、イノリファームっていう会社のパーティーに誘われてるんだ。社会見学」
修二は目をピクッとさせた。
「社会見学って、小学生か」
「そんな感じ。あっ! ごめん私急いでて…。明日また10時にね!」
慌てて修二と別れ、エレベーターにまなみは吸い込まれていった。
「イノリファーム、ね」
修二はぽつりとひとりごとを言い、ラウンジへ入ってコーヒーを注文した。
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