3.期間限定の婚約者

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さっきまで他人だったふたりが手を繋いで戻ってきたので、元気な女子グループは、えっ?という顔をしていたが、もはやそんなことは気にならなかった。 バスがホテルに着いたのは15時を回っていた。急いでシャワーを浴びてサロンに行かなきゃと気が焦る。 「修二、きょうはありがとう」 「こっちこそ、楽しかった。ね…よかったら連絡先、教えてくれない? またどっか行こうよ。俺、ハワイにはもうしばらくいるから」 「うんわかった。ちょっと待って」 肩から下げた、サコッシュをあけるとあれ? スマホがない……パイナップル園からバスに乗ったときはあったのに……。 「どした?」 「スマホがない」 「えっ? バスに忘れたとか?」 「そうかも……バスに乗ったときはあったから」 「ちょっと待ってて」 修二は慌ててフロントに行くと、ことの成り行きを話してくれた。英語でペラペラと話す姿はとても頼もしい。 「大丈夫、今日中にはホテルに届けてくれるって」 「はぁ……よかった。修二、ほんとにありがとう。なんかお礼しなくちゃね」 「そう?じゃあ今度お願い聞いてもらおうかな」 「うん、いいよ」 「明日の予定は? よければノースショアに行こうよ。今度はレンタカーで」 「ノースショア? 行きたい!」 「じゃあ決まり。明日、10時にロビーでもいい?」 「うん、10時ありがたい。今日パーティーがあるんだけど、何時に終わるかわからなくて」 「パーティー?」 「そうなの、イノリファームっていう会社のパーティーに誘われてるんだ。社会見学」 修二は目をピクッとさせた。 「社会見学って、小学生か」 「そんな感じ。あっ! ごめん私急いでて…。明日また10時にね!」 慌てて修二と別れ、エレベーターにまなみは吸い込まれていった。 「イノリファーム、ね」 修二はぽつりとひとりごとを言い、ラウンジへ入ってコーヒーを注文した。
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