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サロンでは里穂が頼んでおいてくれたスタイリストが、メイクもヘアセットもしてくれることになっていた。
「里穂さんにメイクとヘアの感じをご指示いただいています。そのようにさせていただいてよろしいでしょうか」
「はい、わかりました。よろしくお願いします」
もうここまできたら里穂に任せるしかなかった。準ミス富山といえど、東京のモデルさんとは経験値が違いすぎる。
仕上がったまなみは、巻いた髪を右側から流したダウンスタイル、濃いめのメイク、艶っぽい唇。まさに夜のパーティーという格好であった。
「すてきね、まなみさん」
「ありがとうございます。里穂さんもおきれいです」
里穂はダークパープル、ワンショルダーのロングドレスだ。深く入っているスカートのスリットからのぞく美脚にどきっとする。ウエストもキュッとしぼってあってスタイルの良さはすぐにわかった。
「もうじきにはじまるから、いきましょう」
里穂はサロンの前で待っていたパートナーの男性にエスコートされて、ホールへ向かう。あれ? この前の人と違う。きょうは外国人のボーイフレンドか。里穂、恐るべし。
ホテルの一番大きなホールで行われる立食パーティー。高い天井にきらびやかなシャンデリア、モノトーンでまとめた落ち着いた色合いのバンケットホールに、丸テーブルがこれでもかと並べられている。
ざっと300人はいるだろう。その人の多さに胸がギュッとなったが、息を大きく吐いてすっと前を向く。背筋を伸ばして、すこし大股で、里穂のあとをついていった。
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