3.期間限定の婚約者

14/32
前へ
/167ページ
次へ
まなみはぽかんと修二を見つめていた。えっ? イノリファームの副社長? 修二が? こりゃ大変なことになった。イノリファームのお偉いさんとは。どうりでボンボンオーラがバンバン出てたわけだ。 修二の流ちょうな英語のスピーチが終わると、歓談の時間になった。まなみもいろんな男性にひっきりなしに声をかけられて、修二に話しかけるタイミングもなく、食事もたべることもできず、なんとかほっとして元の席に座ったのは、パーティーの終わりかけだった。 「まなみさんも大人気ね」 里穂もやっとイスに座ってワインを飲みはじめていた。さっきの外国人パートナーといちゃこらするので目のやり場に少々困ったが、頃合いを見て話しかける。 「里穂さん、あの副社長の修二さんのことなんですが」 「あら、あの方がお気に入り?」 「いえ……どういう方かなと思いまして」 「北山修二さん、28歳。会長の二男で先月副社長に就任されたわ。社長はお兄さまの龍一さん。お兄さまが日本、修二さんは海外の案件を中心にやっていくようね。確か婚約者がいらっしゃるとか」 「そう……ですか」 「修二さんは難しいかもしれないけど、他にも名刺たくさんいただいたんでしょ?その中にはいい人はいらっしゃらなかったの?」 「はい……」 パーティーの間は何とかその場を過ごすのに必死で、相手の人のことをあまりよくみていなかったし、修二の様子が気になって仕方なかった。 はぁ。しょせん、いっときの夢だったか。フィーリングはすごく良かったけど。婚約者もいるんじゃ遊ばれたなこりゃ。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5152人が本棚に入れています
本棚に追加