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「副社長のご就任おめでとうございます、北山さん」
まなみはぷいっと後ろを向いて修二に背を向けた。
「なにそれ」
「だってそうでしょ?」
「修二でいいよ」
昼間と同じ調子で話す修二に、まなみはいらだちさえ覚えた。次に話す言葉が見つからない。
「明日、この時間なら10時でも大丈夫そうだな」
婚約者がいるのに、どうして私とデートするの? まなみはいよいよ悲しくなり、目に溜まった涙がいまにも溢れ出しそうだった。
「まなみ?どうした?怒ってる?」
「怒ってる……」
「ごめん、なんか言い出せなくて」
修二はため息をついて、まだ背を向けたままのまなみの背中を見つめた。背中の大きくあいたドレスは艶やかだ。
「明日は、いきません」
「えっ!? なんで? 都合悪い?」
「……わたし、そんなにかわいそうに見えましたか?」
まなみは修二の方を振り返ってきっと見つめると、声を荒げて言い放った。
「ハワイにきて、1人でツアーに参加してるなんてかわいそうな女。そう思ったんでしょ? 軽く見ないでよ!! 修二には婚約者がいるんでしょ? 結婚前にちょっとハワイで遊びたいなら、他の人当たってよ!!」
「はぁ? 婚約者?」
「えっ、だってさっき里穂さんが……」
そう言い終わらないうちに、かわいらしい声が廊下の向こうから聞こえてきた。
「修二お兄さまーっ!」
アクアブルーのAラインのミニドレスをまとって、ふわふわに髪の毛を巻いた女の子が向こうから走ってくる。かっかわいいっ!天使がいたらこんな感じか?
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