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「大分、話がズレたので戻しますけれど、9年前、貴方は、こうおっしゃったのです」
七楽は首を捻った。
「『美國様、貴女に一生、お仕えします』と」
「そんなことを言った覚えはないぞ」
「いいえ、おっしゃいました。男に二言はありませんよね?」
「……たとえ、俺がそう言っていたとしても、それは父に言わされただけだろう」
「何故、そう言い切れるんですの?」
「君が、嫌いだからだ」
「そうですか……」
「ああ」
2人とも、スッキリしたのか、悲しいのか、淡々と話すから、分からない。
「で、用件はなんだ? そんな思い出話をするために来たわけじゃないんだろう」
「ええ。では、単刀直入に」
「ああ」
「この学校をぶっ潰すのに、協力しなさい」
「――嫌だ」
「何故ですの?」
七楽は立ち上がって、ドアに向かってゆっくり歩き出した。
「俺は君が嫌いなのだと、さっき言っただろう。嫌いな奴に、わざわざ協力してやるほど、俺は心が綺麗じゃない。そういうことを学校の代表でもある会長に頼まないでくれ」
「では、これでしたら?」
ドアノブに手をかけた七楽の背後で、カチャリと音が鳴った。嫌な予感がして七楽が振り向くと、そこにあった黒いモノと、黒い穴が自分の瞳を見つめていた。
反射的に、誰もが知っている“Hands up”のポーズを取る。
「……分かった。協力しよう」
七楽は、銃口越しに見える、美國の顔を見て、そう言った。
「お利口さんです」
美國は、拳銃を下ろして、口を開かず上品に笑った。
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