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 家に帰り、美國はノートのあるページに書いた4文字を撫でた。  美國の字で書かれたその文字は、全てが右上がりで角ばっている。美國の字は父親によく似ている。  “七楽慧佳” (ならく、けいか。何度見ても中性的ね)  元々、七楽の親は女子なら“さとか”、男子なら“さとよし”と名付けるつもりだったという。しかし名付ける直前で、父親が、“けいか”にしようと言い出したことにより、七楽の名前が中性的な名前になったらしい。  そう、記憶している。  美國が4歳のとき、寝落ちする直前で、父親同士が話していたことだ。  七楽は名前のせいで女子に間違われることが多く、慧佳という名前が好きではなかった。  そして、七楽の父方の家系――君島家は代々、烏鷹家に仕える執事の家系だった。  七楽が、美國に仕えるはずだった元執事であること。これは、美國が七楽を頼ることにした理由でもある。  ノートを閉じて、息を吐く。  キッと宙を見据えた。
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