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「やめなさい! 友達を食べないで!!」
懸命に叫ぶと、ソレがこちらを振り向いた。
当時のような可愛さは消え失せた、鋭利な目があたしを貫いた。
「や……やめなさい」
あたしは後ずさりをして言う。
この子はあたしのお腹から生まれて来たんだ。
あたしがご飯をあげていたんだ。
怖がる必要なんてない!
そう思うのに、声が震えた。
「た、食べるなら……あたしだけにして!!」
次の瞬間、あたしの視界は赤く染まっていた。
自分の体が掴み上げられて肩を噛み千切られ、血が舞ったのだ。
ソレがあたしの腕を美味しそうに粗食する。
じゅるじゅるという血を吸う音ではなく、バリバリと力強くかみ砕く。
「お……お母さんよ……?」
最後の勇気を振り絞ってそう伝えたが、ソレの牙があたしの顔面に突き刺さったのだった。
ハッとして目を覚ますと部屋の中は暗く、まだ夜中だということがわかった。
体全体を使って大きく深呼吸を繰り返す。
こんなに長く気味の悪い夢を見たのは初めてかもしれない。
しかも、やけにリアルで……。
「お母ちゃん」
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