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店内を片付けて家に帰ると、23時を過ぎていた。
鍵を開けると、廊下の電気が点いていた。足元を見ると、靴がある。
「またか・・・」
溜め息をつきながら、右側の扉を静かに開ける。
盛り上がった布団から、微かに寝息が聞こえる。
ゆっくり扉を閉め、リビングのソファーに座る。
ポケットから携帯を取り出し、メッセージを開く。
『久しぶり。元気にしてる?
突然だけど、来月結婚する事になりました』
ソファーの背もたれに頭を乗せ、天井を見つめる。
懐かしい声が聞こえてくる。
中学1年の夏。
夏休みの日中、部活を終えて家に戻ると見覚えのある靴があった。
靴を脱いでいると、リビングから足音がした。
「おっ!シュンおかえりー」
「圭吾君、来てたんだ」
玄関へ歩いてくる従兄弟の圭吾君。俺の3個上で、隣町に住んでいる。
「借りてたゲーム返しに来た」
「じゃあ俺の部屋に行こ」
「俊介!お菓子と飲み物持ってって!」
母さんの声を聞きながら2人で部屋へ走って行く。
圭吾君は俺が小さな頃から兄のように優しく、よく遊んでくれていた。
「次何のゲームがいい?」
「うーん、また今度にするわ」
「え?そうなの?」
「今日はシュンに会いに来ただけだから」
そう言って圭吾君は、俺を後ろから抱き締める。
俺と圭吾君は、その当時付き合っていた。
いつの間にか目を閉じていた俺は、頭を起こす。時計は24時を過ぎていた。
「やべっ・・・風呂入んねぇと・・・」
両手で顔を擦りながら携帯を見返す。
『久しぶり。元気にしてる?
突然だけど、来月結婚する事になりました。
なので、それまでに時間があれば会えないかな?勿論シュンの都合に合わせる。
シュンにちゃんと話したい事があるんだ』
差出人は、圭吾君だった。
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