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俺の姿は
良かった。麗子はご機嫌だ。
だってこの姿は、麗子のとっておきの姿なのだから。
「キレイだよ、麗子。さすがは、『口裂け女』だ。その大きく裂けた口は、いつ見ても最高にセクシーだ」
「やぁね、セクシーだなんて。でもあなたもすごく素敵よ」
「俺かい? 俺なんてたいしたことないよ」
麗子は大きな口をあけたまま、静かにベランダの近くへ歩み寄ると、カーテンに手をふれる。
「今日は満月でしょ? 久しぶりに見せてよ、あなたの本当の姿を」
「ちょ、ちょっと待て、麗子」
慌てて止めようとする俺を、あざ笑うように麗子はカーテンを一気に開いた。
「あっ……!」
不気味なほど輝く満月の明かりが、俺の体を容赦なく照らした。月の光を感じた途端、俺の体は否応なく変化していく。
「あぁあ、アァ、くぅぅ……」
メキメキときしみながら、体が大きさを変えていく痛みに必死に耐える。すると今度は手足が毛むくじゃらになっていく。
「いつ見ても、あなたが変身していく姿は美しいわ。そして最高にセクシー。ねぇ、人狼さん」
満月の光の下で、人からオオカミへと姿を変えた俺は、満月に向かって軽く吠えた。
『うぉぉ〜ん……!』
満月を見ると、俺はオオカミへと変身し、月に向かって吠えたくなってしまう。
だからカーテンをしっかりと閉ざしておいたのに。
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