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何度でも
「ねぇ、覚えてる?」
満月の夜のことだ。
ソファーでくつろぐ俺の隣に、麗子が腰かけながら聞いてきた。ソファーがゆっくりときしみ、麗子のやわらかな重みを受けとめた。彼女はじっと俺を見つめている。
「ねぇ、どうなの? 覚えてるの?」
彼女は同じ質問をくり返す。その答えはいつだって同じだ。
「覚えているよ。忘れるわけないだろ」
「良かった。覚えていてくれたのね」
答えは同じでも、麗子は聞かずにはいられないのだ。
「忘れないでいてくれたら、それでいいの」
麗子はマスクをつけたまま、嬉しそうに微笑んでいる。口元がマスクで見えなくても、目の動きやはずんだような声や仕草で、彼女の喜びが伝わってくる。
腰まである美しい黒髪に、透き通るような白い肌が自慢の麗子。鼻まで覆う白いマスクが、妙に似合っているから不思議だ。
麗子の髪を撫でると、麗子は体をそっと寄せてきた。愛しい彼女と共に暮らし始めて、そろそろ一年以上になるだろうか。
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