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「...くるくるって(笑)。 むぎ、なんか張り切ってるな」
「うん、佐藤って普段はあんな感じなんだね。知らなかった」
「そうなんだよ! あ、 てかせっかくだし祭り誘ってみね?」
「あーでも、佐藤も誰かと行くんじゃない?」
「大丈夫心配ない。 むぎに限ってそれは99%ないから」
「おう... そうか... じゃ、 誘うか。 男だけの面々だけじゃむさ苦しいからね」 (紬、お前も苦労してるなこの男に... かわいそうに...)
こんな会話が向かいの家の二階で繰り広げられていることは、 佐藤紬は知らない。
ほんの少しだけ涼しくなった午後七時頃のこと。 星が見えはじめた空の下、私は浴衣が入っ た紙袋を持っておばあちゃん家の玄関前に出ている。
二時間前、おばあちゃんと夕食を食べ ているとお向かいさんから電話を貰ったのだ。 蒼が家の近くまで送ってくれるから七時頃玄 関前に出ておいてとのこと。 どうやって帰ろうか考えていたところだったから本当に助かっ た。
二人が向かいから出てくる。 優弥がいるのを不思議に思って聞くと、 伊藤家でお泊まり会を するとのこと。 しばらく二人のふざけ合っている後ろを歩いていると、 蒼から三日後にある 祭りに誘われた。 もちろん私が、 行きたい! と即答するわけがなく優弥と誘われ断りの会話 合戦をしている。本当は行きたいけど、 私が居るのなんか申し訳ない…まあ、こんなネガティブ宣言が言えるはずもなく。
これを静かに前で聞いていた蒼が口を開く。
「せっかく中学校生活最後の夏なんだぜ?! 一緒に楽しもーよ? 理沙も誘ってさ、せっかく 仲良くなったんだしさっ!」
たまには嬉しいこと言ってくれるじゃん。 でもな...
「......じゃあ... 理沙が行くなら...」
うん! 行く! なんて何度も断っといて素直に言えるわけがない。
「んじゃ、行くって事で決っ定~!!」
「え、理沙にまだ連絡してないんじゃ...」
「いや、 事前に連絡してたんだよね。 理沙も行くって言ったらむぎも来るのわかってたからな」
「だそうですよー。 てことで、 佐藤、行くでおけい?」
「……はいい」
ということで私、佐藤紬は人生初、 友達と夏祭りに行くことになりました。
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