喜びの舞

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太鼓と笛の祭りらしい音が近づいてきた。 みんなとは鳥居の下で待ち合わせているので向か っているけど、人が多い町をなれない下駄で歩くのは結構な重労働である。 「つむぎちゃ〜ん!こっちです!」 今日も今日とて、理沙は可愛い。手振りながら跳ねてるとか、もう惚れさせにきてるのかってくらいに尊い。淡い青の浴衣が似合ってて、また可愛い。 「おい。そんなスピードで進んでたら祭り終わっちまうぞ?」 後ろから知ってる声が聞こえた。蒼である。 「だって…もう…疲れちゃったんだもん…!」 そんな言葉をかけられながらやっと着いたのは、この地域で一番高い位置にある神社だ。 「つむぎちゃんと蒼君、お疲れさまです」 「ちょ蒼遅ーよ。ずっと待ってたんだからな」 「ごめんごめん、むぎも同じ時間遅刻してるんだし許して」 優しい優弥がなんで「遅ーよ」なんていうかと言うと、今日は七歳の妹の愛ちゃんが一緒だからだ。つまりシスコン。「妹を待たせるな」ということだ。性格を変えるほどとは恐ろしい。ところで男子は私服、愛ちゃんは可愛らしいピンクのワンピースだった。この子がまた可愛い。さっきから下手なウィンクを私に向けてしてる。 「まあ、みんなも揃ったことだし行こーぜ」 「いきたい!あいはね、わたあめたべたいんだ!」 「そうかそうか、兄ちゃん買ってやるからな」 まずは腹ごしらえってことで、屋台でたこ焼きやら焼きそばやら好きなものを買って食べる。それから愛ちゃんが食べたがってた綿あめを買いに、一番目立ってる屋台に来た。理由はもうひとつあって、その看板娘をやってるのがクラスメイトであり、我らの学校一不良の奥田稜香だからである。 「りょうちゃん、わたあめちょーだい!」 「おっ、愛ちゃん来てくれたのか。いつものでいい?」 実は稜香と優弥はいとこ同士なのである。 「はい!五百円ね!毎度!  てか、親父も作れよ綿あめ…働いた分  ちゃんと請求するかんな」 「おう…その分ちゃんと働いてくれよー」 彼女の父は店の端に座り、右手にはスマホ、左手には割り箸を持って綿あめ機を突いている。突いているだけね。 サングラスにスキンヘッド、ハワイアンシャツといういかにも柄の悪い格好をしてるが、実はけっこう子ばかなギャップがある。 「稜ちんは何時まで手伝いすんの?」 稜ちんは蒼がつけたニックネームだ。多分このあとの花火大会に誘うんだろう。 「多分あともうちょっと。蒼たちは花火大会いくの?そうだったら後で合流していい?」 「おけ、じゃあいつものとこで」 そう慣れた返事をしたのは優弥だ。 「あ!ぷりんちゃんだ!!!」 急に愛ちゃんが催し用のステージ指をさして、顔をキラキラさせる。瞳はまっすぐ等身大のプリ○ュア『ぷりん』の抱き枕をロックオンしている。 「おにいちゃん!あい、あれほしいな」 「あれは…カラオケ大会の商品みたいですね…ってあれ?優弥さんは?」 「理沙、ステージ横見てみたらわかるよ」 「優弥さん?!いつの間に??!」 「あいつ優弥はちょっと妹狂信者ならぬ、シスコンだからな」 「何俺のこと話してるんだ?  愛、俺あとでぷりんちゃん貰ってくるからな!兄ちゃんに任せとけ!」 ということで優弥の大会参加は決定し、最前列で応援することになった。カラオケ大会は今回初めての企画で、ちなみに評価はDUMみたいにAI採点ではなく、某のど自慢番組のようなものらしい。だから誰がどんな基準で採点するのかは誰も知らないらしい。 大丈夫なのかこの大会は?
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