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謎解き
5時間目がやっと終わった。さっさと帰る準備をし終えた私、佐藤紬は周りがうるさい中静かにミステリー小説の中にのめり込んでいた。
「紬、それでいいか?」
急に爽やかイケメンボイスに名前を呼ばれ、慌てて立つ。気づくと帰りの会の最中らしく、周りは静まり私のほうを見ている。誰でもイケボに呼ばれたら慌てるでしょ。わけがわからないけど返事だけはしとこう。
「はい」
やばい、声が裏返った。この声をみんなに聞かれた恥ずかしすぎる。私の黒歴史がまた一つ増えてしまった。
「よし、じゃあ決まりだな。今日から頼んだぞー。」
このイケボの正体は我等3年3組担任の五十嵐龍也(イガラシタツヤ)。熊さんのようなわがままボディで、名前負けならぬ声負けしている彼は、目を瞑ればイケメンなのに本当に勿体ない。
そういえば先生に呼ばれた訳がわからなかった。先生の長い話が続く中、後ろの子にこっそり聞くと、呆れられたけど教えてくれた。生徒会の1年間手伝いをする学年代表を決めていたらしい。
手伝いと言う名の雑用係、だから誰もやりたがるはずがなく推薦で押し付けられたのが、私ってわけだ。
あー、もう最悪。本に集中しすぎてた。
これでしばらくは放課後の部活も小説に浸る時間もなくなった。内申点には響かせたくないから、しょうがなく行くことにするけど。
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