2人が本棚に入れています
本棚に追加
ナツのキモチ①
「ねぇ、覚えてる? 去年の吹コンのこと?」
アタシの名前は夏子、吹奏楽部に所属する高校1年生。友だちからはナツと呼ばれている。『吹コン』とは全日本吹奏楽コンクールの略称であったりなかったりする。単に『コンクール』って言う人もいるんだよね。
アタシは今、中学時代の吹奏楽部仲間であり、また現在でも同じ高校の吹奏楽部に所属しているアンズとモモコの二人と一緒に、懐かしの母校…… と言っても、卒業したのはつい3ヶ月ほど前なんだけど…… とにかくアタシたちの出身中学に向かって、これまた思い出深い元通学路である川沿いの小道を歩いている。
この道を3人で一緒に歩いていると、なんだか中学生だった頃を思い出す。中学時代一番の思い出と言えば、なんと言っても去年の吹コン。あれは本当に良い思い出だ。
さて、高校でも吹奏楽を続けているアタシたちなんだけど、実はアタシたちが入学した高校って、吹奏楽強豪校だったりするんだ。なんでも定期演奏会ってのを、年に2回もやるんだって。そんでもって、聞きに来る人もいっぱいいるんだって。いやあ、さすが強豪校って感じだね。中学では弱小少人数吹奏楽部に所属していたアタシたちからすると、想像もつかないほどの強豪校ぐあいだよ。
アタシたちが懐かしの母校に向かっているのは、今度ウチの高校で催される、その定期演奏会のチラシを配りに行くためだ。アンズとモモコと一緒に懐かしの元通学路を歩いていたら、去年の吹コンのことを思い出したんだ。
去年の吹コンは本当にアツかった。みんなで励まし合って支え合って、とにかくみんな一生懸命練習した。アタシのこれまでの人生で一番アツい日々だった。大変だったけど、心の底から楽しかったんだ。アタシが高校でも吹奏楽を続けてるのは、去年のあのアツい経験があったからだと思う。
アタシは懐かしくて、つい吹コンの話を口にしたんけど……
あれ? なんか二人とも急に無口になっちゃった……
最初のコメントを投稿しよう!