記憶の楔《くさび》

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俺たちの高校は、1年から2年になる時、クラス替えをして、2~3年は同じクラスと決まっていた。 クラス替えがあると、すぐ誰とでも仲良くなるヤツらもいるが、俺はそもそも同級生と仲良くなりたいと思ってなかった。 休み時間は好きな本を読んで過ごしたかった。 6月の下旬に文化祭という名の学校祭がある。 それに向けてクラスメイトが一丸となって切磋琢磨することで、互いの親交が深まることを目的とした行事だ。 連休明け、文化祭に向けての準備が始まった。 俺たちの高校では、毎年、行燈(あんどん)行列を行っていた。 それは地域の伝統行事のような扱いで、市の中心街を通る国道の一車線を閉鎖して約7キロ程度、1学年8クラスつまり3学年で24クラス、それぞれが制作した24基の色とりどりの行燈を引いて夜の街を練り歩くという大掛かりな行事であった。 文化祭のメインは行燈行列。 見学した市民に投票用紙を配布し、その集計で1位~24位までが決まるのである。 もう一つは合唱コンクール。 これはどこの学校も、やや同じだろうと思うが、課題曲と自由曲を歌う。 市民会館の大ホールを会場として一日貸し切り、次々に歌う。 市に在住の音楽に精通した数人が審査員として選ばれ、彼らの独断と偏見で順位が決まる。
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