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王子は次に、王様の性器に触れます。そして、口に含みます。大きな果実を含みます。愛しているといいながら貪ります。
すると王様は身震いします。でもまだ起きはしません。王子は王様の足を自分の肩にかけ、すこし持ち上げました。そして、自分の親指をぎりっ、と噛みしめました。
すると、ぷつっ、と音をたてて赤黒い果汁が王子の傷口からあふれ出しました。甘い匂いがします。
そうです、王子もまた、甘い血を持っていました。王子はその汁を王様の恥部に擦り合わせます。赤黒い果汁が白いシーツを濡らします。
王様の体に降りかかります、そこに王子が口づけます。舌を入れて味わいます。
そこで王様は、やっと目を覚ましました。
王様は最初、怪訝な顔をしました。それから悲しい顔をしました。王子が自分の親指を吸うように言います。
王様は首を振ります。そこで王子は言いました。
「僕はあなたを愛しているのに」
「愛している、私もお前を愛しているさ」
「でも、もっと欲しいのだ、全てが欲しいんだ」
「すべて、これが私の全てだ。お前が私の中を暴いても、きっとこれが全てなのだよ」
「では、これはなんなのです、私はあなたが私を愛している以上にあなたを愛している」
「それはきっと、愛に憑りつかれているんだ」
王様は王子の行為を責めるでもなく、咎めるでもなく、肯定するでもなく静かに言いました。
だけれど、王子は首を振りました。
「じゃあ、お母さまと僕、どちらを一番愛しておられるの…?」
そう言うと、王様はとても悲しい顔をしました。
「私は、全てを愛しているよ。この城壁の中の全てを」
それでは駄目だ、そう言って王子は王様を押し倒すのです。そのまま白い王子は黒い王様に赤黒い果汁を振りまいて。
そのまま王様を犯しました。僕がお父様を一番好きではなくては駄目、お父様が僕を愛する分、僕が愛を返したい。僕はお父様の血を全て飲み干したい。
そう言って王子は悲しい顔を崩さない王様に覆いかぶさって、王様を貪るのです。
王様は何か、言おうと思いました。
激しい律動に体を揺さぶられながら、愛とはなにかを考えました。
王様はまず、この王国を愛していました。
城壁で全てを覆って、愛するものを全てを不幸から守りたいと思いました。すると愛で満ちました。
でも、おかしいのです。
今度はお前は誰を一番愛しているのか、そう言われるのです。
大きな一つの国を、王様は愛しているだけなのに。
王様が揺さぶられるたびに、甘い果汁が口に入ります。
そこで、王様は誰かを思い出すのです。僕はあなたの血になりたい、と言った精霊の事を。
愛されるのではなく、愛してくれた精霊の事を。
ああ、と王様は思いました。
そこで、王様は自分を丸ごと食べようとしている王子になにかを言おうと思いました。
でも、叶いませんでした。
王様が何かを話そうとするたびに、赤黒い木苺がぽん、と飛び出すのです。
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