忘れられた扉

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 そして、A子は思う――  同じ親から生まれてきたというのに、どうして妹はああも自分と違うのだろうか、と。  本当にあの子は、小さい頃からどうしてあんなふうだったんだろう。わたしとはまるで違う生きもの。まるで人間ではないみたい。  服装にも気遣わず、いつも本ばかり読んで、輪の中からはみ出すようなことばかりして、姉として本当に世話が焼けた。  大人になった今でも、ブランドものひとつも身につけることをしない。いつも同じトートバッグを持ち歩いて、恥ずかしくないのだろうか。  甲斐性のない男と結婚するから、いつまでたってもそんな生活から抜け出せないのだ。選んだ自分も悪いかもしれないけど、よくよく考えてみれば、あの子みたいな女を選ぶ男は、それなりの男なのだろう。できる男は妹みたいな女、きっと見向きもしないはずだから。  あんな子に育てられた娘は、きっとまともな人生を送れないだろう。    A子はそんなことを考えながら、頭の中に浮かんできた冴えない妹の顏に向けて呟いた。 「あなたにもあなたの家族にもきっと、この手紙は届かないでしょうね」と。
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