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「実里。俺、実里がいないとダメなんだ。結婚してよ、実里」
繰り返す聡介の目には、私は映っていない。
知っている。
ねぇ、聡介。覚えてる?
私には、兄が一人いた。
かっこいい訳ではなかったけれど、生真面目で優秀だった二つ上の兄は、あの夏、聡介のお母さんと付き合い始めてしまった。兄は、学校も友達も家族も全てを捨てて、聡介のお母さんと暮らし始めた。
ゴ自慢の兄だった。
兄は、専業主婦だった母の心の支えだった。兄の優秀さが、兄の優しさが、兄の実直さが、母の幸せを作っていた。
兄が出ていって、母は壊れてしまった。
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