男嫌い

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 申し訳ないなと思いながらも、私は舌を止めない。鰆のチーズ焼きを突く手よりもグラスを空ける手の方が速く、それが聡介への遠慮のなさに拍車を掛ける。  しかし、立て板に水な私の愚痴は唐突にぶった斬られた。 「なぁ。実里、覚えてる?」  私が捲し立てている時に口を挟むようなことを、聡介は決してしない。誰に対しても包容力が半端ない、それが聡介だ。  …だった筈だ。  いつもの聡介でないことが、アルコールで鈍くなっていた私の判断力でも即座に読み取れた。私は、愚痴を止められた不快感より早く、強く、その希少に興味と期待を持ってしまった。 「何?」 「実里が、俺にとって特別だってこと」
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