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プロローグ
「ねぇ、覚えてる?」
20年前のことを今更聞いたところで覚えているはずはない。ただの思い出というか、思い出した話を何も考えずに口にしただけの台詞だ。
佐奈美は1歳の息子の相手をしながら、ああ、うーん、と曖昧な返事をした。
「小1の時の話だし、まあ私もうろ覚えなんだけど、でもはっきり覚えてるのが、その子はお金持ちでさ、学校にブーツ履いてきちゃうような子で、それで周りから浮いてて友達は私しか居なかったんだよね」
それが、途中で居なくなったのだ。
転校したのかもしれない。
「でも、お母さんに聞いてもそんな子の話は聞いたことないって言うんだよね」
「途中で居なくなったのって、いつくらいなの?」
「夏頃だと思う。1学期かな。秋には居なかった」
夏ねぇ、と佐奈美は呟いた。
「雪ちゃんって1年2組だったよね」
「うん。佐奈ちゃんは3組だった」
「そう。3組でさ、2学期の初めに2組をみんなで覗きに行ったことがあって。花が、飾ってあったんだよね」
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