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人柱
人が柱になるというのはどういう意味なのだろう、と幼心に思っていた。それは治水工事の時、川に沈んだ人々の話で、地元ではこの治水工事を知らない人はいない。この大河の流域の小中学校は、一言目には広大な平野への感謝を示し、二言目には大河への感謝を示す、そんなような校歌になっているところが多い。大河への感謝なしに育つこともないし、その大河の成り立ちを小学校のうちに学ばないで育つこともない。
溢れもせず枯れもせず、豊かな暮らしを支える川だが、江戸の終わりまでは洪水を繰り返す大変な川だった。その堤防を作る治水工事のために多く沈んだという人柱。
人が柱となって沈むと工事がうまくいくのだろうか。
だが違った。柱というのは、神の数え方だ。神は一柱と数える。
つまり人柱というのは人を柱にする行為。なぜ沈んだのかといえば、それは物理的な柱になるためなどではない。荒ぶる川の神を鎮めるために生贄になったという意味だ。
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