地元

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 あの人は今、あの人は今、という話に花を咲かせているとあっという間に時間が経った。  そう、あの子の話題はいつもなのだ。元彼にもはとこにも友達のいとこにも、つまり他の同級生の誰にも優先しない。それが20年間あの子が見つからなかった理由。記憶からも、記録からも。  転校していった子なら何人かいる。全て覚えているわけではないにしても、印象はあった。  でも、明確にお別れ会をやっただろうか。理由を聞いただろうか。そう言われるとそれも。  なぜ理由を知らないのか。それは明確だった。知らないのに明確というのもおかしな話ではあるが、親が亡くなったとか、自営業の事業が倒産したとか。こんな田舎は流れ着いていくことこそあれ、出て行くことはないのかと思っていたが案外そうでもないらしい。おそらく仕事がないのだ。こんな土地に住んでいても。
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