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赤いまばたきが眼底に突き刺さる。
左を指している方向指示器は明滅する刃物だ。
私は空っぽになったのに、汚された皮膚や髪は嫌というほどそこにいて、一日を終えた私を絶望させる。
退社直前にあいつが触れた左手首は腐りきって動かしたくもないし、動かしたらグズグズと崩れて道々にばら撒かれそうだ。
もしもあいつの好きなように全身を撫で回させたら、腐って浮腫んで膿んで爛れて、血液に浸した麩菓子みたいに崩れて消えられるかな。
赤いまばたきがもうすぐ終わる。
すべてを終わらせてくれそうな電車の車輪が踏切を犯している。
踏み出せば終わる。
思ったところで赤いまばたきが終わった。
また生き延びた。
早く明日になれ。
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