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驚いて顔を上げると、目の前に栗色の睫毛があった。
夜空より黒くて深い瞳が私を見つめていた。
隣に彼女が座っていた。
いきたくない?
私をまっすぐに見つめながら、彼女が訊ねてくる。
小さな乳房の奥で心臓が踏切よりも大きな音を立てていた。
薄い唇が開いて、また私に囁きかける。
いきたくない?
私はうなずいて、彼女に手を伸ばした。
白くて冷たそうな指が、震える私の指にからみつく。
そうだ、私はここに来るべきだったんだ。
ここなんだ。
私は踏み出した。
栗色の睫毛がバチリと合わさった。
真っ赤なまばたきがこちらを見ていた。
いきたくないよね、わたしも一緒だよ。
彼女の柔らかな翼が私を抱いた。
開かれた唇が首筋にあてられ、歯が皮膚に突き立てられた。
私の血が彼女の口中を満たしていった。
私たちはひとつになった。
いこうよ、わたしが一緒だよ。
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