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~True~
杏子と別れてすぐ、スマホにメールが届いた。お母さんからだ。
『去年お父さんが倒れて先のことが不安だったから、真梨奈が身を固めてくれてお母さん嬉しいわ。しっかり旦那さんを支えてあげなさい。』
「……。」
胸が締め付けられる。お母さんは独り身の私をずっと心配してくれていた。病に倒れ、自宅で療養しているお父さんも同じ。そんな折、舞い込んだ縁談。
私は、苦渋の決断をした。
「マリーミー……。」
振り返り呟いた言葉は夜風に流されて、彼女の元へ辿り着くことはない。
それでも私は人混みの中に彼女を探した。優しくて少し臆病な幼馴染みを。
「ごめんね、杏子……。私が、もっと強かったら……。」
その時、涙が零れ頬を伝った。結婚を決めた時から今日まで散々泣いたのに、涙は一向に涸れてくれない。もしも私が男だったら……ううん、たらればなんて語ったところで意味が無い。これは罰なんだ。想いを伝える事が出来なかった弱い私への罰。
「……さよなら。私の初恋。」
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