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◆◇◆
「それはまた豪遊だな」
その日の夜、ゼロスは日中の話をクラウルにした。それを聞いたクラウルも驚いた顔をしている。本当に申し訳ない。
「本当はもっと格安でと思っていたのに」
「まぁ、いいじゃないか。あちらのご厚意にたまには甘えよう」
「でも」
「それに、俺は金の問題よりもお前とどう過ごすかを楽しみにしているんだ」
「え?」
キョトッとした顔になる。その後は少し、申し訳なくなってきた。
確かに貴重な休みで、それを一緒に旅行にと言ってくれたのだ。クラウルだって疲れているのだし、休みの日にしか出来ない事もある。それを全ておいて、一緒に旅行と言ってくれたのだ。
一番大事にしなければいけないのは、一緒にどのように過ごすか。その時間をいかに楽しい時間に出来るかだ。
「お土産を買って、ハッセの領主にご挨拶とお礼を言いに行こう。その後は色んな事を抜きにして、楽しんでくれるか?」
「勿論!」
「良かった」
ふわりと優しく目が細められ、大きな手が頭を撫でる。その手はするりと頬へと滑り落ち、それを合図に互いにキスをする。欲情ではなく労りと愛情を交えるようなキスは心を穏やかにして温かさをくれる。
「では、それまで色々と揃えないとな。海水パンツなんて、流石に持っていない」
「あっ、俺もだ」
「では、次の安息日は一緒に買い物に行こう」
「そうだな」
なんだか、楽しみになってきた。心が躍るというのはこういう事か。
ゼロスは笑い、素直に今を楽しむ事にした。
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